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パネルディスカッション テーマ『釣り場環境の未来を考える』


コーディネーター
 (株)つり人社 月刊つり人編集長 三浦 修

防波堤は、立入り禁止にするのではなくて、個人の責任において立入らせたらどうか?
アメリカのグランドキャニオンでは、毎年何件かの墜落事故があるが、柵がひとつも無い。これは、個人の責任において、この景観を楽しみなさいということである。

先日、私が川でナマズ釣りをしていたら、近所の人の通報でおまわりさんが来た。その通報した人の言い分は、「大人が楽しそうに釣りをしていると、子供たちが真似をするので危ない。」と言うのである。
大人は子供の遊びを封じるのではなく、子供に遊びは絶えず危険と表裏一体で、それを克服することを覚えて欲しい、それが大人の役割である。

青少年の育成には、釣りが良いのではないでしょうか。


パネリスト
 国土交通省港湾局環境
  ・技術課環境整備計画室室長  岩瀧清冶

防波堤管理者としては、これまで防波堤で事故を起こされては困るので、防波堤に有刺鉄線を張って立入り禁止にしてきたが、現在では安全な場を作り提供する方向に変更してきた。いくつかの防波堤を整備し安全な釣り施設として提供し、ゴミの除去清掃を行っている。

また、青少年の育成には自然体験活動が重要であるので、今その準備をしている。


パネリスト
 (財)日本釣振興会神奈川県支部
           副支部長  山川勝美

釣り具業界、メーカーとしては、自然にやさしい道具を研究して作る必要がある。また、商品に対する過剰な包装を止めるべきである。過剰な包装はゴミを散らかす素になる。

釣り人は、多少値段が高くても自然にやさしい道具を使い、そして釣り場にゴミを持ち込まないようにするマナーが必要である。


パネリスト
 自然暮らしの会代表  清水國明

アメリカでは釣り人のために高額な国家予算を出しているが、日本では漁業事業者に対しては多くの予算を出すが、釣り人に対してはほとんど予算を出していない。

青少年の健全育成のためには、大自然を覚えることである。
自然に入るには、釣りが有効である。
まず手っ取り早いのは、釣り竿一本持たせると良い、釣りを教えればいろいろな自然が後から付いてくる。魚とか、水棲生物とかいろいろ。
アウトドアの究極は狩猟生活であり、それには釣りである。

まず、子供たちに興味を持たせて釣りをするためには、バスフィシングが非常に良い。しかし、現状は子供たちをバスフィシングから遠ざけている行政の政策に思える。子供たちのバスフィシングへの入り口は非常に狭くなっている。

良い子は川で遊ばないと言われて、子供たちから自然は10年20年30年奪われてきました。

最後にひと言、釣り人は自分の権利として、正しいと思ったことはどんどん発言して、自分の釣り場の環境を自分で良くする行動をして欲しいです。


パネリスト
 ジャーナリスト  天野礼子

まず私が教わったのは、釣りをするのならルアーを必ず回収する事でした。

カナダの熊は、一年間に一頭が約700匹の鮭を食べます。
捕まえた鮭を、森の中の自分のテリトリーに戻って食べるのですが、熊は鮭のおいしい部分だけ食べ、約半分は食べ残します。その食べ残しが、山の動物の餌になり、また森の木々の栄養になっていたのです。
鮭は森のために、海の成分を海から川に上がって森へ運んでいるのです。

戦後日本では、アメリカの行政を真似して、ダムを造り始めました。
ダムは当初、国を発展させてくれました。治水をして、都市に必要な多量の水を、供給してくれました。現在、日本では1700くらいのダムが有ります。

私たちは、自分たちの経済生活を良くするために、川にダムを造りました。
治水のためと言われて、川はコンクリートで山から海までまっすぐにされ、堤防が造られ川に近づきがたくなりました。そして、川の流れが速くなり、川が余計危険になったため、川に行かなくなりました。

賛成、反対、いろいろな人々の意見を聞くべきであった。川をまっすぐにしたことは、間違いでありました。
また時代は高度経済成長の時であったため、川が科学物質で汚染されてしまいました。お母さんや学校が、川は危険だから川へ行くなと言って、日本中の川の近くにある学校にまでプールを造り、プールで泳ぎなさいと指導しました。
これにより、私たちが子供たちを、川から遠ざけてしまったのです。

ヨーロッパでも川をダムで管理するため、ダムを造るということが行われましたが、今ヨーロッパでは川を元に戻し始めました。
アメリカでは、ダムを撤去し始めました。すでに500のダムを撤去しました。

琵琶湖では、ブラックバスが小魚やエビを食い尽くしたのではなくて、琵琶湖総合開発と言う、琵琶湖を大きなコンクリートの水がめにしてしまおうと言うような開発のために、小魚やエビが居なくなったのです。

これまでは、漁業組合だけが政府と話し合いをしてきましたが、川を元に戻そうという方向に向いている今、釣り人・釣り具業界・漁業組合が一緒になって、みんなで一丸となって川や湖を元に戻しましょう。


パネリスト
 東京水産大学助教授  水口憲哉

琵琶湖は40年前から、琵琶湖総合開発と言うことで、護岸工事をし、水位を調節して、いろいろな形で琵琶湖に棲息する生物に、影響を与えている。

今から6年前から、すべての漁業対象種が減り始めている。もちろん、ブラックバスも!
ただ、唯一ブルーギルだけが増えている。

漁業者については漁業補償されるが、釣りを楽しみにしている釣り人に対しては、まったく無視されている。漁獲量が減ったことに対して、漁業者は行政から漁業補償を貰っているから、なかなか文句が言えない。
釣り人に対しては、釣れなくなったからと言っても、誰も対応してくれない。

釣り人が「釣れなくなったら他の釣り場に行けばいいや」と言う考えを持っているから、漁業者が釣り人の遊魚のために対応しても、『釣り人は浮気だから、取れなくなったら他へ行ってしまう、結局は水商売だ!』と言う心配が有るからである。
そういう事も含めて、もっと釣り人もその釣り場を大切にすることが必要です。

漁業者が「漁場を無くすな!」と言う時は、釣り人も一緒になって「釣り場を無くすな!」と言えば、もっと大きな声になった。漁業者も釣り人も、被害者なのである。釣り人も漁業者と一緒になって、海や川や湖を守る必要がある。

船体塗料に使うTBT(注:1)塗料は、内分泌攪乱物質(注:2)であるため禁止されるようになった。私は16年前から、学生たちと研究をし始めた。巻貝のメスにオスにしかないペニスが有るという実態を、学生たちが自分の目で確かめる事が出来た。

私は発生源を断つという事で、物の安全性を監督指導し管理している通産省に、TBT塗料を作るな・輸入するな・使うなと訴えてきた。1990年に法律が出来、1997年から生産0となった。現在、世界的にTBT塗料を使わない方向になってきた。
IMO(国際海事機関 注:3)では、TBT塗料を2003年から使わない、5年後の2008年からはTBT塗料を塗った船は走ってはいけない事になった。世界の海からTBT塗料を無くすようになった。これは、日本が提案したことである。業界としても、こういうものを使っていたのでは生き残れないのである。

日本がアメリカに自動車の販売市場が拡大していったのは、低燃費・低公害と言うことで伸びてきたのである。これは、ビジネスである。
そういう事と同じで、釣り具業界も環境にやさしい釣り具と言う形で、一つのビジネスとして展開して行かないと生き残れない。

世界各地で石油タンカーが座礁して、重油流出が起こり、大変なことになった。アメリカでは、法律が出来てタンカーを二重底にするようになった。
それから、日本では何の環境団体の市民運動も無かったが、運輸省がいきなり日本で造る船も二重底にしますと言い出した。なぜかと言うと、これはビジネスチャンスなのです。
二重底にすると建造費が3割高くなるけれど、商売の売り上げが3割増えるのです。

狩猟をすると、鳥が散弾銃の鉛中毒で死ぬ、さらにそういう汚染された鳥を食べた鷲とか鷹が死ぬ、そうしたことは世界的にも大きな問題となっている。
そういうことも含めて、なるべくそういうものは使わない。ただし、少し値段が高くなるかもしれない。だけど、そうやって害の少ない物に変えていくことによって、釣りそのものが維持される。そういうことが結果として、釣り具業界にもプラスになる。

ワームだけではなく、いろいろな物質がいっぱい有るそうした中で、悪いと分かった物は無くしていこう、と言う考え方が大事である。
釣りをする人たちも、そうして自分たちが楽しく釣りをするのには、どうしたら良いのかと関心を持つことが大切である。そういう人たちが増えていけば、自然に業界も変わって行くし、釣りの世界も変わって行く。また、漁業者もそれに対応して変わらざるをえない。

遊魚者(釣り人)が主体となって、いろいろな人たちと話し合いをし、釣り人が釣り業界をコントロールする状態が一番望ましい状態です。


(注:1)



TBT
有機スズ化合物。漁網や船底の汚れを防ぐ塗料として用いられるが,海洋汚染の原因として規制の方向にある。

(注:2)




内分泌攪乱物質
環境ホルモン。
いくつかの有機塩素化合物やプラスチック分解物など,ホルモンに類似した作用を持つ合成化学物質。

(注:3)


IMO
国際海事機関
国際連合の専門機関。海運の安全、海洋汚染防止などを審議する。


  

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